「プロダクション・エースって、実際のところ評判はどうなんだろう?」
声優を目指して事務所や養成所を探していると、必ずと言っていいほど目にするのがプロダクション・エースの名前ですよね。KADOKAWAという巨大なバックボーンがある一方で、ネットで検索すると「やばい」「有名声優が次々と退所している」といった少し不安になるワードも出てきます。
私自身もかつて6年ほど声優を目指して活動していた時期があるので、事務所選びの難しさや、ネットの評判に振り回されてしまう気持ちは痛いほどよく分かります。どの情報が本当で、何が嘘なのかを見極めるのは、業界の中にいないとなかなか難しいものです。
特にプロダクション・エースは、アニメと直結した独自のシステムを持っているため、一般的な声優事務所とは少し違った評価を受けているのが特徴です。「自分に合っているのか」「入所して本当にチャンスはあるのか」、そんな疑問を解消するために、今回はプロダクション・エースの現状や養成所の仕組みについて、私の経験も交えながら詳しく掘り下げていきたいと思います。
記事のポイント
- ネット上で囁かれる退所騒動の背景と現在の事務所の立ち位置
- 養成所生でも現場に出られるという噂の真偽と具体的な仕事内容
- 35歳程度まで受け入れている養成所の年齢制限や費用面でのメリット
- オーディションで重視されるポイントや合格に向けた対策のヒント
プロダクション・エースが、あなたの声優人生のスタートラインとして相応しい場所かどうか、一緒に見極めていきましょう。
プロダクション・エースの評判と有名声優の現在地
まずは、多くの人が気にしている「事務所としての現状」について見ていきましょう。検索候補に出てくるネガティブなワードの正体や、現在活躍している声優陣の顔ぶれを知ることで、この事務所が今どのようなフェーズにあるのかが見えてきます。
事務所がやばい?退所者が続く理由を分析

「プロダクション・エース」と検索すると、サジェスト機能で「退所」「やばい」といった言葉が出てきて、不安になった方も多いのではないでしょうか。これからお世話になるかもしれない事務所に不穏な噂があると、足踏みしてしまいますよね。
正直にお話しすると、ここ数年で野水伊織さんやブリドカットセーラ恵美さんといった、かつてのエース級として事務所を牽引していた有名声優さんが退所されたのは事実です。彼女たちは『そらのおとしもの』や『デート・ア・ライブ』といったKADOKAWAのヒット作品でヒロインを務め、まさに事務所の看板とも言える存在でした。そのため、ファンの間で「看板声優がいなくなって大丈夫なのか?」という動揺が広がり、それが検索ワードに反映されているのが現状です。
しかし、業界の流れを冷静に見ていると、これを単に「事務所の経営が危ない」「内部崩壊している」と捉えるのは少し早計だということが分かります。声優業界全体を見渡しても、ある程度キャリアを積んだ中堅声優が、ステップアップのためにフリーランスになったり、方向性の違いから他の事務所へ移籍したりするのは、決して珍しいことではありません。むしろ、特定のスター声優に依存していた体制から、新しい世代へと「新陳代謝」が進んでいる過渡期だと捉えることもできます。
実際に、退所された方々のコメントを見ても、決して後ろ向きな理由ばかりではなく、「新しい環境で自分の力を試したい」という前向きな決断であることが多いです。例えばブリドカットセーラ恵美さんは、退所時に「死ぬまで声優・役者でいたい」という力強いメッセージを残されています。これは事務所との喧嘩別れというよりは、役者としての次のステージへ進むための卒業という意味合いが強いでしょう。事務所側としても、ベテランの枠が空くということは、それだけ次世代の若手をプッシュする枠が生まれたことを意味します。私たちのようなこれから声優を目指す側からすれば、「上の世代が詰まっていてチャンスがない」という状況よりも、むしろ狙い目な状況と言えるかもしれません。
現在の主力と代表作に見る事務所の強み
「じゃあ、今は誰が事務所を支えているの?」という疑問が湧いてきますよね。かつての有名声優が抜けた穴は埋まっているのか、気になるところです。実は現在、若手から中堅にかけて、非常に勢いのある実力派声優さんが多数在籍し、新たな看板として活躍しています。
例えば、独特のハイトーンボイスで唯一無二の存在感を放つ山本和臣さんをご存知でしょうか。『美男高校地球防衛部LOVE!』の箱根有基役などで知られ、少年役から中性的なキャラクターまで幅広く演じ分けられる彼は、今のプロダクション・エースを象徴する存在の一人です。彼の演技は「かわいい」だけにとどまらず、シリアスな局面での感情表現にも定評があり、多くの作品でバイプレイヤーとして重宝されています。
※2024年3月31日をもってプロダクション・エースを退所され、アミュレートへ移籍されています。
また、2024年の注目作であるアニメ『戦隊大失格』で主人公の一人・桜間日々輝役に抜擢された梶田大嗣さんなど、若手の台頭も目覚ましいものがあります。梶田さんは『SDガンダムワールド ヒーローズ』などでも重要な役どころを演じており、事務所が総力を挙げて次世代のエースとして育成していることが窺えます。彼らの活躍を見ていて感じるのは、かつての「アイドル売り」一辺倒だった時代とは少し空気が変わってきているということです。もちろんアイドル的な人気も大切ですが、それ以上に「作品の世界観を支える確かな演技力」や「代わりの利かない個性」を持った声優が評価され、しっかりとメインキャストを勝ち取っています。
ここがポイント
「過去の有名声優がいなくなった」と嘆くのではなく、「新しい実力派が育っている」という点に注目すると、この事務所が持つ本来の育成力や、KADOKAWA作品への変わらぬパイプの太さが見えてきます。事務所は常に変化し続ける生き物のようなものです。
養成所生はモブばかりという噂の真相

養成所の評判を調べていると、必ずと言っていいほど目にするのが「現場には出られるけど、モブ(名前のない役)ばかりやらされる」という口コミです。これについては、良い面も悪い面も含めて、正直に言うと「事実」である側面が強いです。
プロダクション・エースは「現場直結型」を謳っており、養成所生(演技研究所の生徒)であっても、ガヤや一言だけの端役でアニメや吹き替えの現場に呼ばれることが多々あります。しかし、入所してすぐにアニメの主役ができるかと言えば、それは現実的ではありません。その結果、出演実績のリストには「村人A」「生徒B」といった役名が並ぶことになり、それが「モブばかり」という評判に繋がっています。
ですが、私の経験から言わせていただくと、「養成所生の段階で現場のマイク前に立てる」ということ自体が、他ではありえないほど貴重で、恵まれた環境なのです。多くの養成所では、卒業してオーディションに合格し、事務所に「預かり所属」になるまで、現場の空気すら吸えないことがほとんどです。スタジオに入った時の緊張感、マイクワークの難しさ、プロの声優さんの立ち居振る舞い…これらは教室のレッスンでは絶対に学べません。
「一生モブで終わる」のであれば問題ですが、「下積み時代にモブとして現場経験を積める」のであれば、それは最強の実践教育です。クレジットに自分の名前が載る経験は、何物にも代えがたい自信になりますし、現場のディレクターや音響監督に「あの子、挨拶がしっかりしていて良い声だったな」と顔を覚えてもらえるチャンスでもあります。この評判については、「チャンスの裏返し」と捉えるのが正解だと私は思います。現場を知らないまま年を重ねるよりも、小さくても現場に出ることで得られる成長は何倍も早いはずです。
KADOKAWA作品への出演パイプは健在か

プロダクション・エースを選ぶ最大のメリット、それはなんと言っても親会社であるKADOKAWAとの連携です。アニメ、ライトノベル、映画、ゲームなど、膨大なIP(知的財産)を持つKADOKAWAの作品において、キャスティングの優先度が高いというのは、他の事務所にはない圧倒的なアドバンテージです。
「最近はKADOKAWA作品でも他事務所の声優ばかり使われているのでは?」という懸念の声も聞かれますが、実際のキャスティング情報を見ていると、パイプは依然として健在です。確かに主役級は人気や実力を兼ね備えた他事務所のトップ声優が起用されることもありますが、準レギュラーや脇を固めるキャラクター、そして先ほど触れた「ガヤ」の動員力において、プロダクション・エースの存在感は無視できません。アニメのエンドロールを注意深く見ていると、プロダクション・エース所属者の名前を頻繁に見つけることができます。
また、アニメだけでなく外画(海外ドラマ・映画の吹き替え)の仕事量が非常に多いのもこの事務所の特徴です。KADOKAWAは映画配給も行っていますし、動画配信サービスの普及で吹き替えの需要は年々高まっています。アニメの「有名声優」というイメージとは少し違うかもしれませんが、吹き替えの現場で着実にキャリアを積み、プロとして長く食べていける実力を身につけられる環境がここにはあります。アニメだけにこだわらず、「声の仕事」全般で活躍したいと考えている人にとっては、非常に多くの打席が回ってくる場所だと言えるでしょう。
このような「特定のグループ企業が持つ豊富なコンテンツ」が出演の受け皿になっている垂直統合型のビジネスモデルは、業界内でも非常に強力で、安定した仕事供給の源泉となっています。
歌やトークなどタレント性が重視される

最近のレッスン内容や所属声優の活動を見ていると、単に「いい声」や「演技力」があるだけでは不十分で、+αのタレント性が強く求められているのを感じます。
プロダクション・エース演技研究所のカリキュラムを見てみると、演技のレッスンに加え、「ボーカルパフォーマンス」や「トークパフォーマンス」といった授業が組み込まれています。これは、近年の声優がラジオのパーソナリティを務めたり、作品発のユニットで歌って踊るイベントを行ったりすることが当たり前になった業界トレンドを反映しています。特に、アニメ作品と連動したWebラジオや、ニコニコ生放送(KADOKAWAグループですから尚更です)などの配信番組への出演機会も多いため、フリートークのスキルは必須と言えます。
特にプロダクション・エースは、イベントや配信番組が多いため、「人前で喋れる」「盛り上げられる」というスキルは即戦力として重宝されます。「私は職人気質だから、表に出るのはちょっと…」と引いてしまう方よりは、「歌もダンスも、顔出し配信も何でもやってやるぞ!」というバイタリティのある方の方が、この事務所のカラーには合っているかもしれません。もしあなたが「自分を売り込みたい」「マルチに活躍したい」と考えているなら、その熱意を受け止めてくれる土壌は十分に整っています。
プロダクション・エースの評判に見る有名声優への近道
ここからは、実際にプロダクション・エースの付属養成所(演技研究所)に入所して、プロを目指すための具体的なルートについて解説していきます。「自分でも入れるのか?」「お金はいくらかかるのか?」といった現実的な疑問にお答えします。
35歳まで可能な年齢制限の広さが魅力

私が個人的にプロダクション・エースの最も素晴らしい点だと思っているのが、年齢制限の上限が「35歳程度」と非常に広く設定されていることです。
これは本当に画期的なことです。多くの大手声優養成所や専門学校は、入所資格を「20歳まで」「25歳まで」、遅くとも「27歳まで」と厳しく区切っているところがほとんどです。私が活動していた時も、20代後半に差し掛かると受けられるオーディションが激減し、年齢の壁に阻まれて門を叩くことすらできない絶望感を味わいました。「才能があるかないかを見てもらう前に、生年月日で弾かれる」というのは、本当に辛いものです。
しかし、プロダクション・エースは30代でも受け入れてくれます。これは、「社会人経験を経て、やっぱり夢を諦めきれない」と思い立った人や、「他の養成所で結果が出ずに年齢を重ねてしまったけれど、まだ挑戦したい」という人にとって、まさにラストチャンスを与えてくれる希望の場所です。30代からのスタートでも、アニメの少年役は難しくても、外画の吹き替えやナレーション、落ち着いた大人の役など、年齢を重ねた声質だからこそ輝ける需要は確実にあります。人生経験を演技の深みに変えられる人であれば、年齢は決してハンデにはなりません。
補足
30代以上の入所者は、その落ち着きや社会常識を評価され、ナレーションや企業のVP(ビデオパッケージ)などの仕事で早期に活躍するケースも見られます。
養成所の費用は分割払いも可能で安い

声優養成所への入所を検討する際、どうしてもネックになるのが「お金」の問題ですよね。全日制の専門学校に通えば年間100万円以上かかるのが相場ですし、養成所でも初年度は高額な入所金が必要なケースが多々あります。「夢を追いたいけど、生活も守らなきゃいけない」という葛藤は、多くの志望者が抱える悩みです。
その点、プロダクション・エース演技研究所の費用設定は、業界内でもかなり良心的で通いやすい価格帯になっています。以下に主なコースの初年度費用をまとめてみました。
| コース | 初年度合計(目安) | 内訳・備考 |
|---|---|---|
| 本科・研究科 | 約49万円 | 入所金10万円+授業料39万円(教材費含) |
| 高校生クラス(1年) | 約24万円 | 入所金5万円+授業料18.9万円 |
| 高校生クラス(半年) | 約15万円 | 入所金5万円+授業料9.45万円 |
週1回〜のレッスンとはいえ、年間約50万円という金額は、専門学校などと比較すると半額以下の水準です。さらに特筆すべきは、オリコの「アカデミープラン」を利用した分割払いが可能な点です。多くの養成所が「一括払い」を原則とする中、分割で支払えるというのは、アルバイトをしながら自力で学費を捻出しようとしている若者や、生活費とのバランスを考えたい社会人にとって、非常に大きな助けになります。
「お金がないから夢を諦める」という悲しい選択をしなくて済むよう、経済的なハードルを下げてくれている点は、もっと評価されて良いポイントだと私は思います。無理なく続けられる環境があるかどうかは、長い下積み時代を生き抜く上で非常に重要な要素です。
恵比寿一拠点という立地と通学の注意点
良いことばかりではなく、注意点もしっかりお伝えしておきます。プロダクション・エースの養成所は、基本的に東京都渋谷区の「恵比寿」にあるスタジオ一拠点のみでの開催となります。(※過去にはオンライン等の対応もありましたが、演技指導は対面が基本です)
日ナレ(日本ナレーション演技研究所)のように全国各地に校舎があるわけではないので、地方在住の方が通うには、思い切って上京するか、毎週末に新幹線や高速バスを使って遠距離通学をする必要があります。実際に私の知り合いにも、夜行バスで地方から毎週通っている人がいましたが、体力的にかなりハードそうでした。恵比寿という立地自体は非常にオシャレで、業界関係者も多くいるエリアなので刺激にはなりますが、地方から本気で目指すなら、引っ越し費用や生活環境を整える覚悟も必要になってきます。
注意点
通学にかかる交通費や時間は、長く続ける上でボディブローのように効いてきます。「通うだけで精一杯」になってしまわないよう、自分の居住地やライフスタイルと相談して慎重に検討しましょう。上京を考えている場合は、家賃相場なども含めた資金計画が不可欠です。
オーディションの内容と合格への対策
プロダクション・エースに入るためには、春と秋に定期的に開催される入所オーディションに合格する必要があります。このオーディション、なんと受験料は無料です。多くの養成所オーディションで数千円〜1万円程度の受験料がかかることを考えると、リスクなしで自分の実力を試せるので、迷っているならとりあえず受けてみることを強くおすすめします。
審査内容は、自己PR、セリフ読み、ナレーションといった基本的なものですが、プロダクション・エースならではの特徴として、「スタジオ収録形式」で行われる場合があることが挙げられます。会議室での面接とは違い、実際にプロが使うスタジオで、マイクの前に立って声を吹き込む形式です。ここでは、単に「いい声かどうか」だけでなく、以下のようなポイントが見られています。
- マイク前での立ち居振る舞いや、緊張への対応力
- スタッフの指示(ダメ出し)を瞬時に理解し、演技修正できる柔軟性
- 台本に書かれていないキャラクターの魅力を引き出す表現力
対策として私がアドバイスしたいのは、「上手に読もうとしないこと」です。綺麗な読みはプロなら当たり前。それよりも、「指示されたことに素直に対応できる素直さ」や、「自分はこういう表現がしたい!」という意志を見せることが大切です。また、タレント性が重視される傾向にあるため、自己PRでは演技以外にできること(歌、ダンス、特技、SNSの発信力など)があれば、恥ずかしがらずに全力でアピールしてください。「こいつは面白い使い方ができそうだ」「何かやってくれそうだ」と思わせたら勝ちです。
プロダクション・エースの評判と有名声優の可能性
ここまで、プロダクション・エースの評判や退所騒動の背景、そして養成所の実態について、かなり踏み込んで解説してきました。最後に、これまでの要点をまとめておきましょう。
ネット上には「やばい」「オワコン」といった無責任な評判も一部にはありますが、詳しく分析してみると、KADOKAWAという強力なバックボーンと、現場直結型の育成システムは依然として業界屈指の魅力であることが分かります。「モブばかり」という声もありますが、それは裏を返せば「新人でも現場に出るチャンスが豊富にある」ということに他なりません。このチャンスをどう活かすかは、あなた次第です。
- KADOKAWA作品や外画吹き替えへの出演パイプは今も強力
- 35歳程度まで受け入れ可能で、社会人からの再挑戦やリスキリングに最適
- 学費が比較的安く、分割払いもできるので経済的に通いやすい
- タレント性やバイタリティがあり、自分からチャンスを掴みに行ける人に向いている
特に、「年齢を理由に他の養成所を断られたけれど、どうしても諦めきれない」という方や、「とにかく早く現場の空気を吸いたい」という方にとって、プロダクション・エースは間違いなく検討すべき有力な選択肢の一つです。有名声優への道は決して平坦ではありませんし、競争も激しいですが、まずは「現場で仕事をする声優」としての第一歩を、ここから踏み出してみてはいかがでしょうか。
※本記事の情報は執筆時点のものです。最新のオーディション情報や費用については、必ず公式サイトをご確認ください。
