【1995〜2000年】AMG(アミューズメントメディア総合学院)5年間の全授業を暴露!レジェンド声優・音響監督の指導とプロ現場のリアル

声優養成所や専門学校の公式サイトを見ると、華やかなカリキュラムや「デビュー実績」がズラリと並んでいます。しかし、志望者が本当に知りたいのは「実際にどんな講師が、どんなレッスンを行い、どんな壁にぶつかるのか」という“生の授業内容”ではないでしょうか。

当ブログの運営者である私は、1995年から2000年までの5年間、アミューズメントメディア総合学院(AMG)の「基礎科」「研究科」「デビュー科」に在籍し、演技の基礎から学内オーディション、そして実際のプロの吹き替え現場(2000年公開の洋画『BLINDED』)までを駆け抜けました。

当時教鞭を執られていたのは、鈴木れい子先生、水本完先生、向井真理子先生、津久井教生先生、竹内正男先生など、声優界・音響制作界の歴史を築いたレジェンドばかりです。

この記事では、公式サイトのパンフレットには絶対に載っていない、当時の生々しいレッスン風景、伝説の講師陣からの指導、そしてプロ現場で感じた圧倒的な実力差のリアルを、私の体験談として包み隠さずお届けします。

1. 全クラス共通の「謎の分厚いテキスト」と基礎科(鈴木れい子先生・水本完先生)

AMGに入学して最初に手渡されるのは、ベージュ色の厚紙で表紙が装丁された、ずっしりと重い「分厚いテキスト」でした。

覚えてますか

中には「覚えてますか」といった短文のエチュード(即興劇)用台詞、言葉遊びの「やぎさんのごちそう」、川端康成の『雪国』や芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の冒頭文、そしてテキスト後半には実際の声優プロダクションの過去オーディション原稿のコピー集がぎっしりと詰まっていました。

鈴木れい子先生:小柄な体から繰り出される武道の気魄と自然体な演技

『天空の城ラピュタ』のシータのおばあさん役などで知られる鈴木れい子先生は、合気道を修得されており、とても気さくでありながらレッスンでは元気に喝を入れてくださる魅力的な方でした。

  • 身体のほぐしと腹式呼吸:足を開いて腰を落とし、両手を膝に置いて上体をひねりながら腰を入れる独特のウォームアップから授業が始まります。その後、床に仰向けになって腹式呼吸を徹底的に身体に染み込ませました。
  • 「覚えてますか」のエチュード:「覚えてますか?」と話しかける何気ない日常会話の演習を行いました。ここで突きつけられたのは、「普段無意識にやっている自然な会話を、マイク前で演技として再現することの凄まじい難しさ」でした。自分が普段どう会話しているかを客観的に見直す、大きな転換点となりました。

水本完先生:プロの音響監督が求める「マイク前の息使い」

アニメ『タイムボカン』シリーズを手がけられ、『爆裂エトレンジャー』や洋画『ミスティック・ピザ』などの音響監督を務められた水本完先生の指導は、音響監督ならではの鋭い視点に満ちていました。

印象的だったのは『爆裂エトレンジャー』の巨大鳥形ロボットが「浄化!」と叫ぶシーンのアテレコです。

生徒がグループごとにアテレコした後に、本物のプロの収録音声を聞かされたのですが、そのあまりの違いに愕然としました。

プロの声優さんは、画面の動きと完璧に呼吸を合わせ、「じょーーかーー!」と息の長さを限界までコントロールして演じていました。「自分たちは画面の動きや息の合わせ方すら見えていなかったんだ」と痛感させられた瞬間です。水本先生が胸の前で両手をフリッパーのように開き、「もっと自分の表現を外へ、表へ出して!」とジェスチャーで示されていたお姿は、今でも脳裏に焼き付いています。

2. 研究科(向井真理子先生・津久井教生先生・竹内正男先生)

基礎科を終え「研究科」へ進むと、授業はより実践的かつ多角的な表現力を求められる内容へと進化していきました。

向井真理子先生:テキストを「暗記」して挑んだ朗読指導

やぎさんのごちそう

初代マリリン・モンローの吹き替えなどで有名な向井先生の授業では、「やぎさんのごちそう」などの朗読を行いました。

周りの生徒がテキストを見ながら読む中、私はテキストを丸暗記し、一切手元を見ずに先生の目を見て朗読するという方法で挑みました。表現者として「自分の言葉で伝える」意識を評価していただけた、思い出深いレッスンです。

津久井教生先生:学内スタジオでの「Dream of Dreams」とアドリブ表現

『ニャンちゅう』などの声でお馴染みの津久井教生先生の授業は、学校内の本格的な収録スタジオで行われました。生徒がブース内で演じるだけでなく、交代でコントロールルーム(調整室)に入り、ミキサー側から他の生徒の芝居を聴くという、音響制作の視点を学ぶ貴重な経験をさせていただきました。

「Dream of Dreams」というフレーズを使ったアドリブ表現の課題では、私はあえて「Dream of Dreams、、夢・・・」と、「夢」の部分をゆったりと広がりを持って発声しました。他の生徒にはない独特の空気感を評価していただけたことは、大きな自信に繋がりました。

また、題材のセサミストリートですが、人形の役ではなく「普通の人間の日常会話の吹き替え」も行い、「飾らない自然な芝居」こそが声優にとって最も難度の高い壁であることを再確認させられました。

竹内正男先生:半年間の舞台作りと「主役」への抜擢

竹内先生のクラスでは、声だけの芝居にとどまらず、カメラケーブルの移動を手伝うテレビドラマの撮影補助や、身体全体を使った「舞台演技」を学びました。

ドラマの撮影レッスンでは、先生役で「・・・どういうこと?」と、ちょっととぼける役を一瞬演じた際、竹内先生が大笑いしてくださったことがありました。

そして半年間かけて1つの作品を作り上げた舞台クラスでは、私はなんと「主役」に抜擢していただきました。身体全体を使って人と関わり合って演じる舞台の楽しさは、声だけのマイクワークとはまた違った「役者としての原点」を教えてくれました。

3. デビュー科とプロ現場への切符(学内オーディション)

研究科を経て「デビュー科」へ進むと、雰囲気は一変して「プロとして現場に出るための準備」へとシフトします。

アナウンサー出身の服部先生によるナレーション授業などで伝える技術を研鑽し、いよいよ「本物のアテレコ現場への参加」をかけた学内オーディションが開催されました。題材は洋画『アトランティック・プロジェクト』。

ここでチャンスを掴み取った私は、2000年、ついに本物のプロの収録現場(洋画『BLINDED』)へと足を踏み入れることになります。

4. 2000年『BLINDED』収録現場での衝撃と挫折

BLINDED台本表紙(モザイク)
BLINDED台本

オーディションに勝ち抜き、意気揚々とプロのスタジオに入った私を待っていたのは、半端ではない緊張感とプロの圧倒的な壁でした。

マイク前に立った瞬間、自分の膝はガクガクと震えていました。

何より衝撃的だったのは、ベテランの大先輩方の「一瞬での切り替え」です。

普段の穏やかな姿とは打って変わり、マイク前に立った瞬間に声の張りと雰囲気が激変し、「これだ!いつもテレビで聞いている洋画吹き替えのあの声だ!」という本物の声に一瞬で化けるのです。いやらしいおじさん役を務められた先輩声優さんは、マイク前に立った瞬間に、本当に「いやらしい人物そのもの」になりきっていました。

ガヤ収録で突きつけられた「声量」の決定的な差

私もガヤ(大勢のガヤガヤとした雑音や群衆の声)としてマイク前に立ち、必死で声を張りました。

しかし、後日完成した吹き替えビデオをヘッドフォンで聞いたとき、私は愕然としました。

先輩方の声は大音量でハッキリ聞こえるのに、自分の声がどこに入っているのか全く聞こえなかったのです。

マイク前での発声の通し方、声量、響かせ方——。養成所でどれだけ練習しても、プロの現場の第一線で活躍する方々との間には、果てしない実力の差があることを痛感させられた一生の体験となりました。

5. これから声優を目指すあなたへ(35年の経験からのメッセージ)

1995年から5年間、AMGのすべての課程を経験し、プロの現場の厳しさを身をもって知った私から、今養成所や専門学校を目指している皆さんへ伝えたいメッセージは1つだけです。

「レッスンでもレッスン外でも、常に一番前に出る『一番手の精神』を持って取り組んでください。」

誰よりも早くマイク前に立つ、誰よりも積極的に挙手をする、そしてレッスンとは直接関係のないスタジオの片付けや雑用でも、進んで買って出る。その姿勢と泥臭さこそが、講師陣や音響監督の目に留まり、チャンスを引き寄せる最大の武器になります。

綺麗にまとまった情報だけに惑わされず、ぜひ泥臭く、誰よりも情熱を持って声優への道を切り拓いていってください。

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