マイクの音量を絞られるほどの「響く声」の作り方。ボーカルスクールで教わった「歌棒」と「ピンポン玉」の魔法

「声優になりたい。でも、週に一度の養成所のレッスンだけでは、何かが足りない……」

そう確信したのは1997年。当時、声優養成所に通っていた私は、圧倒的な「練習時間」と「基礎体力」の不足に直面していました。自宅やカラオケボックスでがむしゃらに発声しても、喉を痛めるばかりで、理想とする「鳴る声」には程遠い状態だったのです。

そこで私は、芝居の練習とは別に、「声を出すための物理的な肉体改造」を求めて、東京・代々木にある「上野直樹ボーカルスクール」の門を叩きました。1回30分で5,000円。当時の私にとっては決して安くない投資でしたが、そこで得たノウハウは、約30年経った今でも私の最大の武器となっています。

今回は、ネットのまとめ記事には絶対に載っていない、現場で学んだ「一級品の発声ノウハウ」を公開します。


1. 養成所の外で見つけた「声を磨く」ための最短ルート

多くの声優志望者が陥る罠があります。それは「養成所のレッスンさえ受けていればプロになれる」という思い込みです。

しかし、週1回のレッスンはあくまで「発表と評価の場」であり、体を作る「トレーニングの場」としては不十分。私は、好きな日に予約でき、マンツーマンで徹底的に喉の使い方を矯正してくれるボーカルスクールを選びました。
渋谷のスクランブル交差点にあり、日曜日の午前中によく通いました。歌を題材にする時には、私の好みで、武田鉄矢の「スタートライン」を歌いました。当サイトの名前のルーツかもしれません!

教えていただいたお二人の先生は、声を、つまり喉を使い倒していらっしゃると言いますか、声を聴けば、「あー間違いなく、声のプロだ」と思う響きをしていらっしゃいます。

目的は「歌が上手くなること」ではなく、「誰よりも響く楽器(体)を手に入れること」でした。


2. ボーカルスクールで知った「未知の発声練習」

演技の先生は「もっとお腹から声を出して」と言いますが、ボーカルスクールの教えはもっと物理的で具体的でした。

今すぐ試せる、驚くほど効果的なメソッドをご紹介します。

【歌棒(うたぼう)トレ】

口の開きを一定に保ち、喉の奥を強制的に開く訓練です。

  • 道具: 1cm × 5〜6cm程度の木の棒2本(割り箸2膳の太い方で代用可能!
  • 方法: 左右の奥歯でその棒を縦に噛みます。その状態で口の形を固定し、「アーー」と発声します。
  • 効果: 喋る時に口が閉じがちな癖を矯正し、常に「響く空間」を口内に確保できるようになります。

【ピンポン玉トレ】

唇の筋肉を鍛え、息の漏れをコントロールする訓練です。

  • 道具: 市販のピンポン玉
  • 方法: 唇(歯ではありません)でピンポン玉を挟みます。そのまま空気を漏らさないように意識しながら、喉の奥だけで空気を出し入れし「ア、ア、ア」と発声します。
  • 効果: 唇の「締める力」がつき、マイク乗りの良い、芯のある声に変わります。

【究極の発声ルーティン】

喉を全開にし、肺の空気を効率よく声に変えるための「出し切り」手順です。

  1. 「ツーーー」と無声音で息を長く吐き続ける(※「ウーーー」と声を出さず、歯の間から空気が漏れる「スーーー」という音のまま、肺の空気をすべて押し出すイメージです)
  2. 限界まで吐き切った後、息を一杯に吸い込み止めて、頭を後ろに倒して喉を全開にする
  3. そこから一気に「アーーー!」と声を出し切る

ポイント: 一度肺を空にしてから限界まで吸い込み、一時的に止めることで、体内に高い圧力が生まれます。その状態で喉を全開にして放たれる声は、驚くほどパワフルで「鳴る」響きを伴います。


3. 「歌」以上の副産物:荒井優先生との出会い

このスクールで学んだのは技術だけではありません。担当の荒井優先生は、私が声優志望であることを知ると、自身のコネクションを活かして別の演技教室の見学に連れて行ってくれるなど、親身に支えてくれました。

こうした「人との繋がり」や「スタミナ・音域の広がり」は、孤独な自主練では決して得られない財産となりました。好きな曲を歌うことよりも、発声の基礎を固めたことで、喉のスタミナがつき、台詞の高低(ピッチ)を自在に意識できるようになったのです。


4. 30年後の実証:プロマジシャンの現場で起きたこと

「あの時の訓練は本物だった」と確信した瞬間が、数十年後に訪れました。

私は後にプロマジシャンとして活動することになりますが、あるマジックDVDの撮影現場でのこと。ピンマイクを装着し、いざ収録が始まると、モニターを見ていた音声スタッフから意外な言葉が飛び出しました。

「……すみません、声が通りすぎて音が割れます。少しボリュームを絞らせてください」

他の出演者と同じ設定では、私の声は「響きすぎて」いたのです。30年前、代々木の小さなスタジオで「歌棒」を噛み続けて作った喉は、今も現役の強力な楽器として機能していました。

現在でも私は、大勢の前に立つ直前には必ず、このボーカルスクールで習った発声練習をルーティンとして行っています。


5. まとめ:自分の「足りないもの」を分析せよ

もしあなたが、週5日の全日制養成所に通っているなら、外部のスクールは不要かもしれません。しかし、週1〜2回のレッスンで伸び悩みを感じているなら、「足りないものを外部で補う」視点を持ってください。

「今は演技でライバルに敵わなくても、まずは圧倒的な声量で抜きん出る」

これは、声優業界という狭き門を突破するための、極めて合理的で強力な生存戦略です。繊細な表現も、まずは「聴こえる声」「届く声」があってこそ成り立ちます。

あなたがもし、ネットの薄い情報に飽き足らないなら、今日から「割り箸」を噛んでみてください。その一歩が、30年後も枯れない「一生モノの声」を作る第一歩になるはずです。

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